2011年9月3日土曜日

ズダダーンと地獄の割れた音がした



3・11メルトダウン』の著者・森住さんが、去る3月26日に陸前高田市の避難所で取材した被災者の方へ、取材の報告とお礼に本書を献本したところ、返礼のお手紙とともに届いた短歌15首。

悲しみのあまりの深さに、たとえる言葉がみつからない。震災は現在進行形だ。

(原文は手書き。送りがな、漢字とも原稿のママ。スペースは凱風社で挿入)


お位牌も せん香・ローソク何もなし 避難所暮しの 仏かなしも

納棺師 笹原瑠似子氏こそ尊けれ 四百体もの事を成し了ふ

波こそは わが墓標とふ 戸羽市長 二千四百名 浪に呑まれて

目の前で、父さらはれし男孫、海が敵と車を叩く(私の孫)

返してヨ 家はどうでも息を返せ ヒスイも眞珠もくれてやるから

もんで頂いてもお金が拂へぬと老は言う 恩返しぞと整体師笑む

何を力に 何を支えに 生きゆかむ 一人の吾子も 住む家もなく

捜索も空しく 今日の日も暮るる 瓦礫の山と船と車と

息の分も二人で生きてとふ弟の声に 冷たい雑炊すゝる

カナダから 取材に来たと記者三人 息を呑みたり わが町を見て

NHKの記者は 吾にマイク向け 其の時あなたは 何処へ逃げたと

慰めの言葉見つからぬと 円覚寺慈雲老師の 言葉の重み(鎌倉)

タオル地とウール 岩手に送ったと 芦田淳氏の心情うれし デザイナー

震災を機に 日本永住決めたとふ ドナルドキーン氏の言葉重し

ズダダーンと地獄の割れた音がした 息も友がきも 呑みしあの音