2015年2月2日月曜日

『アウシュヴィッツ博物館案内』の著者・中谷剛さんを「東京新聞」が大きく紹介!


 ナチス・ドイツが約110万人を殺害したアウシュヴィッツ収容所の解放から70年を迎えて、ポーランド南部のオシフェンチムで1月27日、世界各国の首脳ら300人が集まって70年記念式典が開かれました。新聞などで報道されたのでご存知の方も多いかもしれません。この70年のあいだに生存者が少なくなり、ホロコースト(ユダヤ人やロマらの大量虐殺)の「現場」を知ろうとすると、アウシュヴィッツ博物館として保存されている「収容所跡」をつぶさに見学して、犠牲者の苦しみに思いを馳せることしかできなくなりつつあります。
 世界中から見学者が訪れるこのアウシュヴィッツ博物館で、日本人唯一の公認ガイドとして17年にわたって日本人らを案内してきたのが中谷剛さん(1966年生まれ)です。小社では博物館の全面協力の下で中谷さんが書いた『アウシュヴィッツ博物館案内』を2005年前に発刊し(2012年に新訂版発行し好評発売中)、信頼性のあるガイド書として増刷を重ねてきました。「解放70年」に当たって、東京新聞は2月1日、「あの人に迫る」というコーナーで、ほぼ全頁にわたって中谷さんへのインタビューを掲載しました。その中で中谷さんはこう語っています。
 「(日本人の)若い人たちと話すと、戦争をめぐる近代史の知識が抜けている人が多いことに気付きます。アジアの問題への対応で考える材料がないことになり、なんとかしてこの部分を穴埋めしないといけない。/その上で若い人には『今から経済が弱くなって悪い時代になるわけではない。今までできなかった、もっと良いものが見つかるんだ』と伝えたい」
 ガザ地区パレスチナ人へのイスラエルによる無差別攻撃、ISIL(自称「イスラム国」)やボコハラムの非道・卑怯な殺戮・誘拐行為、一部日本人らのヘイトスピーチ――政治や経済のグローバル化に伴う貧困・格差の増大と、自己の優越性を一方的に強調するナショナリズムおよび他者への憎悪が一体の関係にあることを、「アウシュヴィッツ」は今なお私たちに発信し続けています。
 「排斥」の思想が社会に広がると、平凡な人も「人間を人間と思わなくなる」ことがあると、アウシュヴィッツの歴史から中谷さんも指摘しています。
 日本政府はいま、辺野古への新基地建設強行、核兵器の原料となるプルトニウムを溜め続ける原発の再稼働、特定秘密保護法施行や集団的自衛権の閣議容認など、平和主義・民主主義を弊履のように捨て去って「戦争ができる」国に向かって強行突破を図っているように見えてなりません。
 『アウシュヴィッツ博物館案内』は若い人たちにぜひお読みいただきたい本です。そして可能ならぜひ、ポーランドのオシフィエンチムを訪ねてみてください。
(文責:小木・新田)