ピース・フィロソフィー・センターの乗松聡子さんが、12月6日付で発表された「オープン・ソサエティ財団」プレスリリースを翻訳している。→ウェブサイト
訳文中の英文原文を取り除いて日本語部分を全文下記に引用する。
「オープン・ソサエティ財団」は米国の著名な投資家のジョージ・ソロス氏が設立した財団。
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新聞で報道される最近の石破茂・自民党幹事長の一連の発言を読んでいると、英文の「public interest」を辞書的に「公益」と訳すと危険な気がする。憲法案も含めて自民党の言う「公共の利益」には政府・権力側が暗に(明示的に?)含まれている。今の日本政府ならびに官僚の頭から抜け落ちているのは「行政権力側ではない、住民・国民の側の利益」であり、これがpublic interestのはずだ。
また、このプレスリリースにある「public interest override」(公益優先)は極めて重要な概念だと思う。同リリースの説明によれば、ある人が住民・国民にとって利益となる情報を漏洩させたとしても、その情報によって生ずる実害より住民・国民の利益が上回る場合は刑事罰は科されない、とある。自民党と官僚にはこの概念が決定的に欠如している。
凱風社は今日(2013年12月13日)公布されたこの「特定秘密保護法」に反対し、風穴をあけるような書籍を積極的に刊行していこうと思う。
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日本の新しい国家秘密法は公共に対する説明責任を脅かす
2013年12月5日
ニューヨーク発 オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシアティブ[訳者注:ツワネ原則作成を主導したオープン・ソサエティ財団の一部門]は、金曜日(12月6日)に日本国が採択することが予想されている新規の国家秘密法の規定に対し深い懸念を表明した。
ジャスティス・イニシアティブの上級法務官サンドラ・コリバーは、この新法が、国家安全保障と国家防衛に関する事項についての公衆の知る権利に厳格な制限を設定することにより、国際基準を大きく下回るものになっていると指摘した。
ジャスティス・イニシアティブにおける情報への権利に関する研究事業を率いるコリバーは、「この法律によって日本は一歩後退することになる」と語った。
オープン・ソサエティ財団の上級顧問で、米国の3つの政権において国家安全保障の重要ポストを務めたモートン・ハルペリンはこう述べる。「この法律は21世紀の民主主義国家が検討するものとしては最悪の部類に入るものだ。その内容と同じくらい深刻なのは、市民社会や世界の専門家を関与させた広範囲にわたる公聴会や協議会なしにスピード成立させてしまうことにある。」
表現の自由に関する国連の特別報告者であるフランク・ラ・ルーは、法案は「秘密保護について極めて広範かつ曖昧な根拠を定めるだけでなく、内部告発者、さらには機密に関して報道するジャーナリストにとっても深刻な脅威を含んでいると見られる」との懸念を表明している。
新法は以下のような規定を含む。
●2001年の法律[訳者注:自衛隊法改正]で「我が国の防衛上特に秘匿することが必要である」情報を防衛秘密とする権限を防衛大臣に与えた現行の権限を飛躍的に拡大させるものである。
●情報を秘密指定する権限を持つ行政機関のリストが、防衛省を超えて、さまざまな省庁や政府の主な機関に拡大される。
●秘密指定された情報を公開したことに対する最大の罪が2001年時点での最大5年から最大10年に延長される。
●行政機関による秘密指定を行政から独立して審査する規定も、裁判所により審査する規定もない。
●公開することにより生じる可能性のある害よりも、公益の方が大きいと思われる情報の公開を許可する「公益優先」についての条項がない。
●公益的開示をした者を守る条項がない。これは、高い公益性を有する情報を流出させた人は、その情報における公益性がその情報が実際にもたらす害より大きい場合は刑事処分の対象とはしないと規定するものである。
今回の法律はこれらの全ての側面において、「ツワネ原則」と呼ばれる国家安全保障と情報への権利に関する国際原則集に反映されている国際基準と最優良事例(ベスト・プラクティス)に比べて、著しく劣るものである。
ツワネ原則は国際法と各国の国内法、さまざまな基準と優良な事例にもとづくものであり、現代の民主主義社会における法律や各地の裁判所での決定に反映されている。安全保障セクター、諜報や外交の分野で経験のある500人の専門家の助言を受け、世界中の22の団体と研究機関により起草されたものである。ツワネ原則は欧州評議会議員総会、国連の関連する特別報告者たち、そして環米およびアフリカの人権保障諸制度の情報への権利または表現の自由に関する特別報告者たちに支持されている。
ツワネ原則は、秘密指定の決定が確認可能な害から守るためであり、定期的に審査を受ける限りは、政府が繊細な情報をある一定期間公衆から隠すことを認めている。しかし日本の法案はこの基準を満たしていない。
安倍晋三首相は、米国のモデルにもとづく国家安全保障会議(NSC)を作る計画に、より厳格な秘密法が必要不可欠であると何度も言明している。日本の新聞各社も、米国高官が日本の秘密指定制度をより厳しくするよう日本に圧力をかけていると報道している。
しかし米国の親密な同盟国の中には、秘密指定の決定に公益性を考慮し、秘密情報の許可なき公開に対する処分は最高5年かそれ以下で、国家秘密指定を許す行政機関の数もより少なく、秘密指定に対し裁判所や他の独立機関により異議を申し立てることを可能にするプロセスを備えているところは数か国ある。
サンドラ・コリバーは、「米国の秘密指定のモデルは他国に強要するべきものでは決してない。米国政府により秘密指定を受ける情報は膨大であり、本当に必要な秘密を守ることを事実上不可能にしている。」と付け加えた。「公衆が国家の活動についての情報をしっかり得ることによって国家安全保障は最大限に守られる。それは国家安全保障を守るためになされることも含む。」
仮訳:乗松聡子 info@peacephilosophy.com @PeacePhilosophy
(訳は読む人に迅速に概要を理解してもらうために急いで行ったものなので100%正確とは保証できません。送信後修正する場合があります。報道などされる場合はそれぞれの責任で確認してください。この仮訳での訳語を使うのは自由です。広めてください。)
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